突然親が倒れた!さぁどうする?

【ロジカルシンキング】親の「介護サービス」を設計する(費用概算付き)

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介護もビジネスも、「原因分析」「解決策考案」にはロジカルシンキングが効果的

退院後の父の生活を安定させるにはどうすればいいかーーー

父が心の病気で入院して2カ月、そろそろ退院できますよ、と医師から説明を受けました。

 回復したことは嬉しいのですが、病気になった理由が、「母が倒れたから」だとすると、そこは改善できません。よって、母がいない家に、このまま帰ってもダイジョブなのかと心配になりました。

心の病気を患った父ですが、現段階では体の不自由はなし。

 この状態で、父の退院後の生活を安定させるには、どのように考えたらいいか…ロジカルシンキングで整理することにします。

父の退院後の生活を考える

私の仕事経験を応用する

 ロジカルシンキングとは、「物事を体系立てて整理し、一貫して筋が通っている考え方」のこと。日本語でいうと「論理的思考」です。

 私にはこんな仕事経験があります。

 私は「クリエイティブ研修」という名で研修講師も行っています。その中に「ロジカルクリエイティブ(私の造語)」というテーマがあります。「クリエイティブをロジカルに考える・説明する」という主旨なのですが、お客さまの要望から企画したもので、教育ニーズの高いテーマのひとつです。

興味のある方は私のホームページクリエイティブ研修をご覧ください。「ロジカルクリエイティブ」の原稿作成はこれから掲載する予定です。

 ロジカルシンキングを代表するフレームワークとして「MECE(ミッシー、ミーシー、どちらでも読むようです)」「プラミッドストラクチャー」「ロジックツリー」などがあります。

「MECE」とは、「モレかつダブリなし」という考え方のこと。重複したり、ヌケモレをしないという、物事を整理するときの重要な観点です。
「ピラミッドストラクチャー 」とは、課題・結論・根拠の一貫性を図式化したものです。主張と根拠を整理するのに効果的です。説明・説得シーンによく使われます。
「ロジックツリー」とは、物事をツリー状に分解し、原因の分析や解決の考案を論理的に行うためのフレームワークです。

(お伝えしながらすみませんが、これ以上の詳細説明は長くなりますので、おすすめの本を紹介しておきます↓)

Bitly

 私がフリーランスで活動していく中で、打ち合わせ時に一番活用しているフレームワークが、ロジックツリーです。打ち合わせで伺う時は、ほとんどのケースで会議室にホワイトボードを準備してもらい、議事録をその場でとっていく、という手法をとります。ブレーンストーミング(自由に意見を出し、多彩なアイディアを得る会議法。ブレストともいう)の際には、いろんな観点の話が出るので、その場でロジックツリー にしてしまうケースが多いです。

 その場でロジックツリー を作成してしまうのは、可視化させることで、物事を整理し、会議参加者の理解を統一させる意図があります。

 この経験を活かし、ロジカルシンキングで考え、ピラミッドストラクチャーとロジックツリーを使って「原因」と「解決策」を見出してみます。まずは「原因」追及からです。

父入院の「原因追及」には、すでに考えていた自分の仮説を検証したいという意図もあって、ロジックツリー でなくピラミッドストラクチャー を使用しました。「解決策考案」にはロジックツリー を使用しています。
「ピラミッドストラクチャー」は前章【問題解決思考】主介護者(私)の体調悪化に対処するにも登場しています

父の病気の「原因」をフレームワークで考える

父の心の病気は、母が倒れたことが原因です。

 ではなぜ、母が倒れて心の病気になったのか … 母が倒れたことで、何かが欠けたからだ、と考えた自分。そこで、父が日頃よく話す内容を思い出し、父の思考や着眼点を整理してみます。

父の日常を振り返る

  父は、1日に何回も「食事はどうするんだ?」と聞いてきます。これは、母がいなくなって自分の食事を作ってくれる人がいないから。つまり「食事に不安を持っている」という仮説が成り立ちます。

 また、父はすぐに「それいくらだ?」「それは高い」「安いから買った」と、お金に結びつけた発言をする傾向にあります。親の資産は母が全て管理していたので、父はまったく把握していない状態。知らないからこそ、不安になる。父は「お金についても不安を持っている」と考えました。

 加えて、日常生活のささいなことに対して、何でもすぐ聞いてきます。聞いてくるのはいいのですが、自分で決めたらいいじゃんか、というレベルの質問まで繰り返し質問してくるのでやっかいです。

 例えば、私が出かけるタイミングで、ポットのスイッチは入れた方がいいのか、抜いた方がいいのかを聞いてきたり(家にいるのは自分だけなんだから、自分で決めたらいい)、今日は半袖を着るべきか、長袖を着るべきかを聞いてきたり(寒いんだったら長袖、暑いんだったら半袖を着ればいい)。

 自分で決めたらいいじゃんかレベルの、同じ質問を、何度も繰り返し聞かれるという父と二人だけの毎日を過ごし、私は「父に話しかけられる恐怖症」になりました。

 「父に話しかけられる恐怖症」の行く末は、父への文句になりやすい。何度も同じことを聞かれると、ついつい声を荒げてしまう自分。私との「言い合い」は、父を不安にさせてしまう原因の一つかもしれない、と反省しました。

 もともと父は末っ子・甘えっ子気質。母に、自分で決めたらいいじゃんかレベルの質問をしていた理由は、回答が欲しいというより、肯定をされることで安心したい、という気持ちの方が強かったのでしょう。父にとって母は、精神的支柱だったんだと再確認させられました。母のいない「さびしさ」は人一倍強いはずです。

 ここまで洗い出しが終わると、母が倒れたことによる、父の心の不安の原因がみえてきました。

▲父入院「原因追及」ピラミッドストラクチャー

父の退院後の生活安定に向けての「解決策」をフレームワークで考える

今度は「解決策」について考えます。

1.「食事に関する不安」についての解決策

 今までは私が作っていましたが、仕事で忙しいと時間がまばらになったり、打ち合わせで家をあけることも多い。不規則・不安定な状態だと父の不安が取り除けない、と考え、食事は安定した供給をしてもらえる高齢者向け宅配に切り替えることを決断します。

2.「お金に関する不安」についての解決策

 ややこしいお金管理は、覚悟を決めて私がやることにしました(同居していても世帯は別なので、それまで私は、親の資産関連は一切知りませんでした)。

 請求書関連書類、銀行通帳、家権利書など、保管されていたと思われる箇所をすべてさらい、わーっと書類を広げながら、関連カテゴリごとに分類したり、エクセルで一覧を作ったり。

 気づけば徹夜になり、終日かかりましたが、この作業したことで親のお金まわりが把握できました。もう父に何を聞かれてもダイジョブ。父の質問に答えられる状態を作れれば、安心してくれるはずです。

3.「日常生活のささいな決断に関する不安」についての解決策

 そもそも高齢者は、老化により、出来ることが減っていくので、自信を失い、不安を抱えるケースが多いそう。であれば、何かを任せて「頼る」こと、「出来ることを増やすこと」で、自信を持ってもらおう、と考えました。

「自信を持つ」対策は2つ。

 ひとつは、簡単な家事をまかせること。調べると、簡単な家事は、繰り返し同じことをするので、失敗が少なく、自信を持ってもらうのに効果的のよう。

 きれい好きな父は掃除や洗濯が好き。またちょっと前に炊飯器に興味を示してたのもあり、「洗濯」と「炊飯」をお願いすることにしました。父に話すと、楽しそうに「やってみる」とのこと。これはいけそうです。

 ふたつめは、私が変わらなければいけないこと。出来ないことを責めるのではなく、出来たことを褒めるよう努める。父と二人になると、どうしても言い合いになってしまうことが多い。これからは「できないのが当たり前、できたらすごい」と、根本から考え方を改め、褒めることを意識しようと決めました。

4.父娘二人生活「言い合い」についての解決策

   言い合いになってしまうのは、そばにいるから。そばにいなければ言い合いにならないはず、と考えた自分。父と物理的に距離をとることにしました。

 これまでは、フリーランスである私は家で仕事をすることが多かったのですが、これだと父は、すべて私に頼ってきてしまいます。私の姿が目に入ると、何かとそばにくるし、甘えが出て自分で考えようとせず、すべて聞いてくる。

 ここは、シェアオフィス等を借りて、自宅外で仕事をするようにしようと決めました。父と距離をとる方が、自立してくれるはず。私も父に優しくなれるはず、と考えたのです。

5.「母のいないさびしさ」についての解決策

 母が家にいないさびしさを埋めるためには、人との交流を増やすといいのでは、と考えました。父に話してみると「自分で友人に会いに行くから問題ない」と発言。ですが、今の父は活動的ではありません。この様子だと、引きこもりもなりかねない。

 人に会うことを仕組み化した方がいい、と思い、送迎もしてくれる「デイサービス」を交流目的で利用する、ということを視野に入れました。

6.「薬」「身体チェック」についての解決策

加えて、退院後なので、医療観点での解決策も「6」として追加することにします。

 今まで父は、自分の薬の管理は自分で出来ていました。よって、そんな神経質になる必要はないかもしれませんが、病気によって薬の処方が増えたので、チェックできるようにしたいと考えました。

 ケアマネージャーに相談すると「訪問看護」をすすめられました。調べると、医師や看護師との「世間話」は、精神安定にも良いよう。ここは、定期的に訪問してもらい、バイタルチェックから、薬の処方の確認、世間話までお願いしようと決めました。

これらの解決策をロジックツリーでまとめてみます。

▲父退院後の生活安定「解決策」ロジックツリー

利用する外部サービスを考える(費用概算付き)

 このように整理すると、退院後に依頼したほうがいい「外部サービス」がみえてきました。

<父退院後の外部サービス利用イメージ>

①安定した食事提供を目的とした「高齢者向け食事宅配」

②薬の確認、バイタルチェック、世間話を目的とした「訪問看護」

③人との交流を目的とした「デイサービス」

これら3つの決定プロセスと、参考までに、利用頻度を含めた費用概算を順に書き出してみます。

介護サービスの事前相談プロセスは【チームビルディング】介護支援体制を自分で作るを参照

①「高齢者向け食事宅配」をほぼ毎日

  病院のソーシャルワーカーに相談し、オススメの「高齢者向け食事宅配」業者を紹介してもらいました。高齢者向けの食事なので、栄養バランスはもちろん、気になる塩分・カロリーも全て計算済み。これは心強いです。

 父は嚥下機能に問題はないので、硬さ・大きさは普通でOK。するとお値段は一番安いものですんでいます。

◯参考/食費概算:1食約550円×2食(1日)×約30日=月額約3万3000円

業者により価格は異なりますので、あくまでも参考にとどめてください

②「訪問看護」を週一回

 ケアマネージャーに、エリアをベースに、おすすめの訪問看護ステーションを紹介してもらいました。訪問看護師の方々と始めに面談をし、意向や相談内容を事前にすり合わせた上で、訪問頻度を決めました。

 父は身体的には問題ないので、点滴や入浴介助などの必要はなく、薬処方確認とバイタルチェックと世間話。よって訪問時間は30分。訪問頻度は週一回となりました。

◯参考/訪問看護費用:週一回・訪問時間30分程度=月額約4000円

実際の費用は、介護保険を利用していますので、ケアマネージャーのケアプランをもとに点数で算出されています。点数算出はわかりかねますし、また負担割合は個人によって変わりますので、あくまでも参考程度にし、費用規模としてみていだだけると幸いです。

③「デイサービス」を週一回

 ケアマネージャーに、目的をコミュニケーションとし、なるべく父と同年代がいる施設と曜日を調べてもらいました。

 すすめられた施設は見学依頼をかけ、実際に足を運び、方針を伺ったり、設備などを見せてもらいました。見学した施設は2件。

 最終的には、見学時に父が興味を示していたのもあり、「筋力アップのためのマシンが充実」「カラオケ設備有り」の施設に決めました。

◯参考/デイサービス費用:週一回・利用時間6h・昼食付き=月額約8000円

実際の費用は、介護保険を利用していますので、ケアマネージャーのケアプランをもとに点数で算出されています。点数算出はわかりかねますし、また負担割合は個人によって変わりますので、あくまでも参考程度にし、費用規模としてみていだだけると幸いです。
 父の場合は、「訪問看護」と「デイサービス」は介護保険を使用していますので、上記は自己負担金額。ケアマネージャー管轄となり、施設・利用頻度・料金など、すべて相談しています。「高齢者向け宅配食事」は全額実費です。

介護サービス設計その後

 父の退院を医師から促され、ここまでまとめるのに2週間。

 父の退院日翌日には、ケアマネージャー・食事宅配・訪問看護師・デイサービス関係各位を自宅に招き、面談を実施し、契約を交わしました。

そして、退院日翌々日からサービス利用を開始させました。

我ながら中々の実行力です。

(この行動力は、それだけ、母のいない父との二人生活に不安を感じていたという、「負のパワー」によるものです。専門家の皆さん、驚いておられました)

この原稿を書いている時点で、サービス利用して数週間たちますが、今のところ順調です。

こうして父も私も、ようやく日常生活が安定し始めたのでした。

まとめ

  • まずは「原因分析」をしてみましょう。「原因」がみえたら、その原因ひとつひとつに「解決策」を考えていけばOK
  • 「外部サービス」利用を視野に入れようと思ったら、ケアマネージャーさんに相談すると早い
  • 外部サービス利用以外でも、悩みがあったらケアマネージャーに相談することをおすすめ。専門家のお力に頼りましょう
  • ちなみにケアマネージャー費用は全額介護保険対象、負担0円です。ありがとう!
  • 介護サービス利用経験がなく、まだケアマネージャーがついていない、という場合は、地域包括センターに相談してみましょう(我が家はそうでした。介護保険申請時に、保険福祉センターに相談したら、地域包括センターを案内されました)
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