介護もビジネスも、率先して旗振りを行うことにシフトせよ
母が倒れて4カ月が経つ頃、今度は父が倒れました。
精神的にも、日常生活的にも、母に頼りきっていた父は、精神的支柱を失った不安からか、心を患い、体調を悪化させ入院することになりました。
姉も私も、母が倒れたショックが抜けないまま、なんとか母の介護施設を選びを終え、安心していた矢先の、父の入院です。
加えて、父は、プライドのせいか甘えなのか、「体調が悪いから入院したい」と言ったり、「入院は嫌だから家に帰りたい」と言ったり。娘たちの言うことを聞いてくれません。
これから母の退院・施設引越し・契約・お見舞返しなど、やることがたくさん。ここに父の入院対応が加わって大変だというのに、入院させるのに手がかかる父。
「オーマイゴット!ひどいよ神さま!」
心の中で叫びました。
リーダーシップを発揮する
あまりにも追い込まれた状況なので、幸か不幸か遠慮する余裕がなくなり、逆に冷静になった私。協力をお願いしたい人にこの状況を正直に話し、巻き込もうと決めました。
そして、何をしたいか、どう伝えるかを整理し、自分はリーダーに徹しようと腹をくくりました。
私の仕事経験を応用する
私にはこんな経験があります。
かつて若かりし頃、尊敬する上司に「(メンバーに)仕事をまかせる勇気を持て」と言われたことがあります。今では、リーダーシップを発揮しなければいけないシーンでの、私なりに重視しているポイントです。
リーダーシップとは、「目標・ビジョン」を提示し、メンバーのパフォーマンスを最大化させ、目標達成を実現させる能力のこと。リーダーの資質として「真摯であれ」とドラッガーは言っています。
メンバーパフォーマンスの最大化の第一歩は、仕事をまかせることから始まります。リーダーとして「目標・ビジョン」、時には「スケジュール」「タスク」までを提示するのはあたりまえですが、大事なのは、「メンバーパフォーマンスが最大になるように、リーダーが環境を整えること」だとその上司は言うのです。
「最終的には自分の責任になる」と考えてしまうと、仕事をまかせにくいと考えてしまいがち。だからこそ、そこで「まかせる勇気」を発揮せよ、「自分がやったほうが早い」と思うなかれ、ということです。
「目標・ビジョン」を示し、必要であれば「スケジュール」「タスク」までを明確化し、「まかせる勇気」を持つ。そして「メンバーが自走できる環境」を作り、「安心できるフォロー環境」も合わせて整える。
この学んだリーダーシップを介護に活かしてみます。
リーダーシップを発揮できる環境を整える
対応しなければならない案件を洗い出す
これから、こなさなきゃいけない案件を列記してみます。
- 母関連:病院支払い・退院手続き・施設入居準備・施設契約・お見舞返し、日々のお見舞いなど
- 父関連:入院準備・入院手続き・日々のお見舞いなど
- 今想定できない案件発生に備え、余力を残しておきたい
んーなかなか重たい。
メンバー構成を考える
これらが実行するために協力をお願いしたい人をイメージし、メンバー構成を整理します。
・リーダー:私(介護主体者)
・フォロワー(リーダーとの信頼関係をより強固なものにし、
貢献力と批判力をもってリーダーを補佐する人):姉
・メンバー:母方の叔母二人と、姉の夫である義兄
役割分担を整理する
次に、やらなければならないことや、お願いしたいことなどを整理してみます。
父も母も病院入院、施設入居と環境が変わるので、変化の内容、主に病院・介護施設の契約内容(面談や書類対応)やルール(持ち込み可能範囲・面会制限・面会時間など)の把握。その上で、私の判断や依頼したいことを整理する。
リーダーがまとめた情報を全て共有。それにまつわるリーダーが判断した内容は、すべて確認・チェックしてもらうようお願いする。
依頼内容だけでなく、背景として「現在の状況」「これから発生するイベント」「それにまつわる制約やルール」、判断の自由度の目安として「私の判断例(姉チェック済み)」を伝える。
メンバーに役割と依頼内容を伝える
人は、情報が共有され、何をすべきか、それはなぜなのかがわかると、率先して協力してくれます。
早速まとめた情報を共有し、お願い事を依頼してみました。
<フォロワーである姉に依頼すると…>
情報収集した内容から、契約書類、パンフレットまで全部見てもらい、それにまつわる私の意見を聞いてもらいました。
姉は、人の上に立つのは嫌いますが、意見を聞くと、なんでも的確に答えるので助かります。
迷っていること、悩んでいることに対し、スパッと答えを示してくれるので、どんどん物事が整理されていきました。
<メンバー母方の叔母二人に依頼すると…>
状況を理解してくれた叔母たちは、私の手の回らない分、まめに母のお見舞いに行ってくれました。
それだけでなく、母の伸びた髪を切る手配をしてくれたり、頭の手術跡を気にする母に帽子を購入してきてくれたり。 病院に行って気づいたことは、率先して実行してくれました。
さすが人生のベテラン! 私が気づけなかった部分のケアが半端ない! 大助かりです。
<姉の夫である義兄に依頼すると…>
義兄は、急逝した父の姪の墓参りを提案してくれたり、父の友人の葬式の手配をしてくれたり、子どもがいた方が雰囲気が明るくなるからと、遠方から甥っ子たちをつれて見舞いに来てくれたり。
これまた気づいたことをどんどん提案し、実行してくれました。
さすが人生の先輩! 私の気づけなかった部分のケア気遣いが半端ない! これまた大助かりです。
こうしてみんな、どんどん行動し、のちに「やっといたよ」と報告をくれました。また相談があれば「どうする?」と事前に確認してくれたので、「こうしてください」「お願いします」と再度お願いすることも多くありました。
リーダーシップ発揮による好循環
これは、ビジネスでいうと、リーダーシップにより好循環を生んでいる状況です。
・メンバーは担当業務を自ら推進し、結果と相談事項をリーダーに報告。
・それにより発生した追加オーダーは各担当メンバーに再依頼。
・メンバーはその結果をリーダーに報告。
まさに良いスパイラルが生まれている状態です。
まわり人の協力を得たい場合は、自らが率先してリーダーシップを発揮し、ゴールを示す。そして、依頼内容だけでなく、その目的や理由を説明し、メンバー自ら判断できるような動きやすい環境を作ると、想像以上のメンバー協力を得られる。
やっぱり、ビジネスも介護も同じだ…
いやいや、ビジネスの角度でしか解釈できないだけ。これもまた偶然でなく必然。親の介護のためにも、ビジネススキルを身につけたのかもな〜と、空を見上げて思いました。しっとり。
まとめ
- 介護は一人じゃ無理
- 複数で対応するとなると、リーダーシップが必要
- リーダーは、「ゴール提示」「依頼内容」、その背景となる「目的・理由」と合わせて、「メンバーに期待すること(どこまで自由に判断し、行動していいかの目安になる)」を示すと効果的
- リーダーは旗振りに注力、作業は勇気をもってメンバーに依頼
- リーダー権限の裏には責任が発生、覚悟も必要
- コミュニケーションを密に取り、信頼感を増すことで、心理的安定性が生まれると、メンバーパフォーマンスが最大化し、好スパイラルに繋がる。